こんにちは。今日はイギリスの給食事情の第2回目です。
最近の給食は難しい
かつてと違い、最近は各生徒のアレルギーへ細かな対応が求められる様になっており、給食制度も大変だと思います。
加えて、イギリスでは多様な食文化についての配慮も重要です。様々な宗教の人がいますし、生き方、主義も多様化しています。
そしてイギリスの学校はこのことに対する取り組みが非常に進んでいます。一方で日本の対応は遅れています。
今日はベジタリアンとヴィーガンについての話をしようと思います。
ベジタリアン
交換留学などにより、イギリス人の生徒が僕たちの学校に来ることがあります。そうした生徒たちが10人いれば、1、2人はベジタリアンです。
彼らは「肉」を食べません。卵や乳製品は食べますので、タンパク質は摂っています。
理由は、「健康のため」ということが多いです。家庭的に、子供の頃から肉を食べたことがない、という子もいました。
宗教的理由でないことがほとんどで、肉が含まれるものを一切食べないというほど厳密ではなさそうですが、肉の味に敏感で、肉が含まれていることが分かると気持ち悪くなるという子もいました。
僕が現地の学校へ勉強に行った時に泊めてもらったお家の主人の場合は、腎結石を患ってからベジタリアンになったと言っていました。残念ながら(僕は肉料理大好きなので)その家にいる間は、一回も肉料理は出ませんでした。まさに「健康のため」というケースです。
ベジタリアンの中にもいくつかカテゴリーがありますので、一括りにはできません。中には宗教やスピリチュアル的な要因があるケースもあります。
ですが、上記の通り、「ベジタリアン=宗教」という認識を持つと誤解を生みやすいので注意してください。
ヴィーガン
ヴィーガンは「完全菜食主義者」を指します。イギリスが発祥なので、イギリス人にヴィーガンは多いです。日本でも最近「ヴィーガン」という言葉が浸透してきましたね。
ヴィーガンはベジタリアンの中でもっとも厳密な部類に入る人たちで、卵も乳製品も、動物性の油も摂りません。「動物(生き物)を人間の都合で搾取しない」という思想が前提にあるので、ベジタリアンよりも「主義」が明確です。
ヴィーガンにもカテゴリーがあり、革製品など動物由来のものをいっさい使わないという人もいれば、食べ物限定の人もいます。
必然的にタンパク質が摂りにくく、日本の家庭科を勉強してきた身としては余計なお世話かもしれませんが、栄養バランスが気になります。イギリスの食事は日本の精進料理の様に多くのメニューがあるわけではないので、豆料理もそれほど多くなさそうですし。。。
学校給食ではどう対応?
前回の「ハラルフード」も含め、イギリスでは様々な宗教、主義を持った生徒がいるため、給食においては「選択肢」を提供できるかが重要な視点となります。
具体的には、メニューを必ず2通り用意します。多くは通常食とベジタブルフードの2通りで、生徒に「選ぶ権利」を与えます。僕たちの学校にはイスラム教の生徒はいませんが、いた場合はさらにメニューが別れることになると思います。
僕が小学生だった頃、「セレクト給食」という制度があって、1学期に1回か年に1回か忘れましたが、事前に用紙が配られて、楽しく選んだ記憶があります。
僕たちの学校では、毎日事前に訊くわけにもいかないので、必ず2通り用意します。当然余ることもありますが、それでいい(余らないようにメニューを改良する必要はあるが、結果的に余るのは仕方ない)というのがイギリス的な考え方です。
「もったいない」は無い
この辺り、生徒たちに「残さず食べなさい」と日本的に指導している身としては少し心苦しいところです。
日本の場合、給食にも教育的意義を求めます。
- バランスよく食べること
- 皆で平等に取ること
など、厳しい言い方をすれば戦後のスタイルがそのまま残っている気もしますが、「食べ物を大切にする」という日本らしい良き文化だと思っています。
一方で、学校を訪れるイギリスの生徒たちは好きなものを摂り、よく残します。「もったいない」という感覚はなさそうです。「それぞれの主義、個性、自由を尊重する」というイギリスらしい考え方だと思います。
日本の給食はどうなるか
日本の給食は「一律・平等」が基本なので、ベジタリアンやヴィーガンへの対応はなかなか時間がかかりそうです。そもそも、こうした文化を理解したり、許容することすら、日本の教育現場では難しそうな気がします。
手っ取り早いのは給食制度を廃止して弁当持参にすることです。
でも、僕は皆で一緒に同じものを食べる、あの給食の楽しさ、良さも大切にしたいです。
課題は山積みですね。
Leave a comment